ARVO2024 レポート:
今回、ARVO 2024 in Seattleに参加してきました。以前は旭川医科大学からも大人数で演題を持って参加されていた伝統があると聞いています。長岡教授のご厚意で、この春に大学院へ入学した我々もご同行し、海外学会デビューをさせて頂きました。これから研究や臨床をやる上で、たくさんの刺激を受けモチベーションも上がりましたので、少しでもこの経験を共有できればと思い、レポートを書かせて頂きます。今後、若手を含め、たくさんの医局員で演題を出して海外学会へ参加できるように医局を盛り上げていければと思います。
今年のARVOはSeattleで開催されましたが、学会参加前に長岡教授プレゼンツアメリカ満喫ツアーと題して、様々な研究所の見学やアメリカで活躍されている先生方を訪問させて頂き、大変貴重な経験ができました。最初にOklahoma州のDean McGee Eye Instituteという、一見総合病院かと思うような大きな建物に眼科だけの診療や研究室が入っている施設を訪問させて頂きました。アメリカの大きな診察室やラボを見学し、スタッフの多さや充実した研究室の雰囲気に感動しました。ここでは長岡教授から施設の研究員へ現在まで教授が進めている研究についてショートプレゼンがあり、英語でのディスカッションを拝聴させて頂きました。ディスカッションから今後の研究のアイディアや課題を見つけられる事も、海外学会にきて交流する大きなメリットと感じつつ、長距離フライトと時差ボケで、眼球の輻輳と、眼瞼が下垂してくるのと戦いながら、勉強しました。
その後は、教授の留学時代からのご友人であるRobert先生の豪邸にお邪魔させて頂き、優雅な部屋とふかふかのベッドを我々に快く提供して頂きました。映画に出てくるような豪邸が立ち並ぶ高級住宅街にプライベートレイクがあり、ゆったりとした時間が流れる空間でアメリカの生活を全身で感じることができました。アメリカの優秀な眼科医になると、このような素敵な生活ができるものなのかと夢を見せていただきました。ステーキハウスで大きなステーキをご馳走になり、朝食も朝早くから準備して頂き、美味しいタコスをお腹いっぱい食べさせてくださいました。とても親切にしていただいたRobert先生一家に感謝です。
時差ボケを1日で克服した我々はレンタカーを借りてTexasへ運転を交代しながら長距離ドライブを楽しみました。途中、観光も楽しみましょうということで、アメリカといえばメジャーリーグ。Texas Rangersの本拠地Globe Life Fieldでメジャーリーグ観戦をしつつ、長岡教授の血流研究の師匠Kuo先生がいらっしゃるTexas A&M Universityを訪問させて頂きました。Kuo先生に研究者としての姿勢や考え方など大変勉強になるお話をたくさんお聞きすることができました。なんでも質問していいよとおっしゃって頂いたので、「実験で良い結果が得られない時、どうやって対処していますか?」と質問すると、「実験の結果に良いも悪いもないんだよ。大切なのはどうしてこの結果が出たのかを立ち戻って考えることだ」と教えて頂きました。これからの大学院生活をこの言葉を忘れずに、過ごしていきたいと思います。
University of Texasでは教授としてご活躍されている日本人、田中弘文先生を訪問させて頂きました。先生の経歴もエネルギッシュですが、研究への熱意や興味を持ったことを研究に取り入れていく姿勢はすごく刺激になりました。動脈硬化や内皮機能不全などの血管老化を中心に運動生理学がご専門です。日本の海人さんを対象とした研究や、アルツハイマーと運動に関する研究など、興味をそそる内容の研究が多く、目の血流との関連や研究アイディアをたくさん頂けたと思います。自分の興味を探究していく田中先生の姿勢を見習って、エネルギッシュに研究活動していきたいと思いました。Texasでの美味しいグルメとして郊外にあるThe SALT LICK BBQに立ち寄り、Texas sizeの肉をみんなでシェアし、頭もお腹も満たされた充実の1日でした。広大なTexasの大地と、ホテルに置き去りにされた千葉先生のお気に入りのスウェットに別れを告げ、いよいよARVO学会会場のあるシアトルに向かいます。
シアトルについてまず空港で早速事件が起きました。それはTAXIを拾い拠点となるホテルへと向かおうとした時のことです。教授や今野先生には丁寧に接していただき運転手さんでしたが、私の顔を見るなり、「お前、どっかで会ったことあるか?ここ来るの初めてじゃないだろう?」と流暢な英語で話しかけられます。私は「いいえ、シアトルどころかアメリカ本土にも今回始めてきました」と拙い英語で答えますが、「おいい嘘付かないでくれよ、じゃあなんだってか、俺があったことあるのは君の兄弟かなんかかい?」と運転手さん…ここが、まさかの私の顔面の外国人いじりは万国共通出会ったことが発覚した瞬間でした。そんなこんなで無事にホテルへと到着した一向でしたが朝からの移動で疲れはあるものの、前日までのテキサスとは打って変わって超都会の高層ビルや海の景色に圧倒され、学会の下見と称して、街中を散歩に出かけることとしました。
我々の目当てはなんといってもスターバックスの1号店です。医大の学生や先生が皆お世話になっている、あのスターバックスの発症の地がこのシアトルなのです。行列は必死であることは想像に易く、時間のある初日にと、早速Google Map担当の私がみなさまを案内し、お店の近くまで来ましたが誰一人並んでおりませんでした。これは幸いとウキウキで店内に入ろうとしますが、なんと改装工事中というオチでした。それは誰も並ばないよなと肩を落とす一向。しかしせっかく訪れたので2号店の方へと足を運び、見事限定品もゲットすることができ、Google Map係としての面目躍如を果たすことができました。
翌日からは学会に参加しさまざまな最先端の研究を学びましたがそれについては後述させていただきます。学会の合間や終わった後は気分を入れ替え、観光や交流会に参加させて頂き、また別の刺激を頂きました。連日行われた様々な交流会では他の大学の先生方の普段の仕事のことや研究内容であったりを聞かせていただいたほか、アメリカのオクラホマ大学の交流会に参加した際には誰もが知っている教科書を書かれている先生ともお話しをさせていただけるなどと、なかなかできない貴重な経験をさせて頂きました。
観光では「シアトルといえば」というような有名スポットをまわりました。スペースニードルからのシアトルを一望する景色であったり、Pike Place Marketの出店の数々やガムの壁と言われるストリートの一角などなど。私も今野先生も子供のように眼を輝かせ多くの写真を撮りましたのでいくつか載せさせて頂きます。
また初日には改装工事していたスターバックスの1号店も無事修復され、みんなで訪れることができました。今回はしっかり行列ができていました。楽しい話は尽きませんが、そろそろ学術的な内容にも触れたいと思います。いくつか今回のARVOで我々が気になったトピックスを共有させて頂きます。
糖尿病網膜症に関連する血管新生や炎症性シグナル伝達経路の両方の転写因子を調節するRef-1を阻害する経口接種できる新薬に関する発表がありました。すでに第2相臨床試験のデータが出ており、第3相臨床試験に向けて事後解析として、実際に糖尿病網膜症の進行を抑制しうるのか、という内容でした。内服した群で有意に糖尿病網膜症の進行を抑制しうる結果が得られていました。眼科医としては現状、糖尿病網膜症が悪化してからの治療がメインになっていますが、進行の抑制に介入できる新薬ができれば網膜症診療がまた一歩変わるのではないかと感じました。
興味深いと思われたのがアルツハイマーモデルのマウスを用いた研究です。そこではアルツハイマーの症状が出てくるよりも先に眼に変化が出てくるというものです。具体的にはERGの変化であったり、眼杯の形状が変わっているという点に着幕された研究でした。
テキサスでの田中先生との話し合いでも出てきていたアルツハイマーについての研究であったので、やはり眼科としてもアルツハイマーに関する一助となる研究はあるのだなと感じ、自分の研究の指針ともなる出会いとなりました。
我々は今回の旅での経験を踏まえ自分の研究に活かし、今度は研究結果を持ってのぞめるようにしたいと感じました。
(文責:今野、千葉)